共有

第3話  

作者: リンフェイ
「おばあちゃん、頼りにしてるよ」

 内海唯花は適当に答えた。

 結城理仁は血の繋がった孫で、彼女はただの義理の孫娘だ。結城おばあさんがいくら良い人だといっても、夫婦間で喧嘩した時に結城家が彼女の味方になるだろうか。

 内海唯花は絶対に信じなかった。

 例えば彼女の姉の義父母を例に挙げればわかりやすい。

 結婚前、姉の義父母は姉にとても親切で、彼らの娘も嫉妬してしまうほどだった。

 しかし、結婚したとたん豹変したのだ。毎回姉夫婦間でいざこざがあった時、姉の義母は決まって姉を妻としての役目を果たしていないと責めていた。

 つまり、自分の息子は永遠に内の者で、嫁は永遠に外の者なのだ。

 「仕事に行くのでしょうから、おばあちゃんは邪魔しないことにするわね。今夜理仁くんにあなたを迎えに行かせるわ。一緒に晩ご飯を食べましょう」

 「おばあちゃん、うちの店は夜遅くに閉店するの。たぶん夜ご飯を食べに行くのはちょっと都合が悪いわ。週末はどうかな?」

 週末は学校が休みだ。本屋というのは学校があるからこそやっていけるもので、休みになると全く商売にならなくなる。店を開ける必要がなくなって彼女はようやく時間がとれるのだ。

 「それもいいわね」

 結城おばあさんは優しく言った。「じゃあ、週末にまたね。いってらっしゃい」

 おばあさんは自分から電話を終わらせた。

 内海唯花は今すぐ店に行くのではなく、先に親友の牧野明凛にメッセージを送った。彼女は高校生たちが下校する前に店に戻るつもりだった。

 人生の一大イベントを終え、彼女は姉に一言伝えてから引越しなければならなかった。

 十数分が経った。

 内海唯花は姉の家に戻ってきた。

 義兄はすでに仕事に行って家にはおらず、姉がベランダで服を干していた。妹が帰ってきたのを見て、心配して尋ねた。「唯花ちゃん、なんでもう帰ってきたの?今日お店開けないの?」

 「ちょっと用事があるから後で行くの、陽ちゃんは起きてないの?」

 佐々木陽は内海唯花の二歳になったばかりの甥っ子で、まさにやんちゃな年頃だった。

 「まだよ、陽が起きてたらこんなに静かなわけないでしょう」

 内海唯花は姉が洗濯物を干すのを一緒に手伝い、昨晩の話になった。

 「唯花ちゃん、あの人はあなたを追い出したいわけじゃないのよ。彼ストレスが大きいみたい。私も収入はないし」

 佐々木唯月は夫に代わって釈明した。

 内海唯花は何も言わなかった。義兄は考えを変えて彼女を追い出したいのに間違いはなかった。

 義兄は会社の部長で収入も多かった。姉は彼と大学の同級生で最初は同じ会社で働いていて結婚した。結婚した後、義兄は深く愛情を込めて姉にこう言った。「これからは俺が君を養うから、家でゆっくり休んで、子供を作る準備をしようよ」

 姉は良い人と結婚したと思い、本当に仕事を辞めて専業主婦になってしまった。結婚して一年でふくよかな赤ちゃんを産み、子供の世話と家庭を切り盛りしているのだ。姉は忙しすぎておしゃれをする時間も、スタイルに気を使う時間もなくなってしまった。こうなったからには専業主婦をやめて職場復帰するなんて事は尚更無理だった。あっという間に三年が過ぎ、彼女の姉は若くてきれいなお姉さんから小太りして適当な服を選び、全くおしゃれをしない専業主婦へと変わってしまった。

 内海唯花は姉より五歳年下で、彼女が十歳の頃、両親が交通事故で二人とも亡くなってしまった。それからというもの彼女たちはお互いに支えあって生きてきたのだ。

 両親の交通事故の後に受け取った賠償金は、本来であれば姉妹が大学を卒業するまで十分足りる金額があった。しかし、両親のどちらの祖父母にも賠償金の一部を取られてしまい、残ったお金を節約して苦労した末に大学を卒業できた。

 実家も祖父母に取られてしまったため、内海唯花はずっと姉と一緒に外で部屋を借りて、姉が結婚するまで姉妹一緒に生活を続けていた。

 内海唯花の姉は彼女のことをとても大事にしていた。結婚する前、義兄に結婚した後は彼女と一緒に住みたいと言っていて、義兄もそれを快く承諾していたのだ。しかし、今は彼女が一緒に住むことを嫌がるようになった。

 「お姉ちゃん、ごめんね、私厄介者で」

 「違うのよ、唯花ちゃん。そんな事言わないで、父さんと母さんが早くに亡くなってから、お姉ちゃんはずっとあなたを頼りにしているんだから」

 内海唯花はその言葉が心に響いた。小さい頃は姉が彼女にとっての支えで、今は姉の支えになりたいと思っていたのだ。

 彼女は少し黙ってから、結婚証明の書類を取り出して姉に渡して言った。「お姉ちゃん、私結婚したの。さっき結婚の手続きに行ってきたのよ。だから帰ってお姉ちゃんに一言報告したくて、もう少ししたら荷物をまとめて引っ越すからね」

 「結婚したって?」

 佐々木唯月の声は甲高くなり、叫んだといっても過言ではなかった。

 彼女は信じられないといった様子で妹を見つめながら素早く結婚証明書類を奪い取り、それを開いてじっくりと見た。そこには確かに見ず知らずの男の写真も入っていた。

 「唯花、どういうこと?あなた彼氏すらいなかったでしょ?」

 結婚証明書類と一緒に入っていた写真の男は顔立ちが良かったが、瞳は鋭く顔つきは冷たく見えた。人目見てすぐに簡単に仲良くなれるようなタイプの人間ではなかった。

 内海唯花は帰る途中に言い訳を考えていて、すぐにこう言った。「お姉ちゃん、私には結構前から彼氏がいたのよ。彼の名前は結城理仁。彼はいつも仕事が忙しくて、お姉ちゃんに会わせる時間もなかっただけよ」

 「彼がプロポーズしてくれて、私はそれを受けたわ。それで、一緒に役所に行って結婚手続きしたの。お姉ちゃん、彼すごく優秀な人なんだから。私にもすごく良くしてくれるから、安心してね。これから絶対に幸せになるからね」

 佐々木唯月はやはり受け入れられない様子だった。

 妹に彼氏がいるなんて一度も聞いたことがないのに、今日突然結婚するなんて考えられなかったのだ。

 昨晩の夫婦喧嘩のことを思い出した。妹がそれを聞いていたのだ。佐々木唯月は思い出すと辛くなり目を真っ赤にさせて妹に言った。「唯花ちゃん、お姉ちゃんは彼に食費はちゃんともらってるって伝えてあるから、安心して一緒に住んでいいのよ」

 「そんなに焦って結婚して出て行かなくてもいいの」

 彼女は断言できた。妹はこの男性と知り合ってそんなに経っていないはずだ。そうでなければ、妹は姉に彼氏がいることを言っていたはずだからだ。

 今日妹が突然結婚手続きをしたのは、彼女の夫が妹と一緒に長く住んで嫌気がさしたからだ。妹は彼女の結婚生活が危なくなる前に、焦って結婚したのだ。

 内海唯花は微笑んで姉を慰めて言った。「お姉ちゃん、本当にあなたとは関係ないのよ。私と理仁はすごく仲が良いの、本当に幸せになるんだから。お姉ちゃんに喜んでもらいたいのに」

 佐々木唯月はずっと涙を流し続けていた。

 内海唯花はどうしようもなく姉を抱きしめた。姉が泣き止んで落ち着いてから、姉に約束をした。「お姉ちゃん、私しょっちゅう会いに帰ってくるから。理仁の家はトキワ・フラワーガーデンにあるの。ここからそんなに遠くないわ、電動バイクで十分くらいの距離なのよ」

 「彼の家の状況は?」

 もうここまで来たのだから、佐々木唯月はただ受け入れるしかなかった。そして、妹の旦那の家庭状況を聞いてきたのだ。

 内海唯花も結城家の事についてはあまりよく知らなかった。彼女と結城おばあさんが知り合ってから三ヶ月経つが、彼女は結城家についてあまり関心を抱いていなかったのだ。結城おばあさんが話してくれた時だけ聞いていた。ただ結城理仁は長男で、下には弟(従兄弟も含む)がいるとだけ知っていた。

 結城理仁は東京でも一二を争う大グループ会社で働いていて、車も家もあるのだ。家庭状況を考えても悪いはずがない。内海唯花は自分が知っている情報を姉に教えた。

 妹から購入済みの家があることを聞き、佐々木唯月は言った。「それは結婚前の彼の財産でしょう?唯花ちゃん、彼に不動産権利書にあなたの名前を加えるように言ってくれる?」

 不動産権利書に妹の名前があれば、なにがあろうとも最低限の保障は得られるからだ。
この本を無料で読み続ける
コードをスキャンしてアプリをダウンロード

最新チャプター

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第2144話

    沙織は夫を追いかけて家から出てきた。豊は車に乗る前に、妻にひとこと残していった。「しっかりお前の娘を説得してくれよ。あいつがまだ不倫しようという考えを捨てず汚名を背負って生きていくか、今のままでいるか、どっちかだ。しっかり考え抜いて答えが出たら私に教えろ。もし、まだ悩むようで決められないなら絶対に連絡してくるな。私は娘などいないことにして生きていくからな」沙織は黙っていた。豊は運転手に言って車を出させた。すると、あっという間に彼は家から遠ざかっていった。沙織はどうしようもなく、家に戻ると、娘がソファでしくしくと泣いているのを見て、心が締め付けられた。沙織は夕菜に近づいて、彼女の頭をコツンとつつき、怒りの混じった声で言った。「夕菜、小さい頃から、私たちがしっかり教育してきたでしょ。どうしてこんな馬鹿な事をしたの?星城の結城家の理仁さんね。確かに彼はとっても優秀な方だわ。いくらそうだったとしても、彼にはもう奥さんがいるのよ。それなのにあなたは彼を追いかけ回して、奥さんにふざけた写真を送りつけた。つまり、お二人の家庭を壊そうとした。それに自分は彼の不倫相手になっていいと思ってるのね。夕菜、あなたはとっても素敵な子よ。辻家で育ち、こんなに良い条件に恵まれているあなたと比べられる人なんてそうそういないの。お母さんもあなたがとってもプライドが高いから、普通の男では満足できないって知ってる。もし、結城社長が独身なら、思う存分口説きにいけばいいわ、私たちだって応援するもの。だけどね、彼は既婚者なの。だからもう彼への気持ちに蓋をして忘れてしまいなさい。お母さんとお父さんはずっと仲が良いのよ。一番ああいう不倫をするような人間が大っ嫌いなの。だからあなたにそうなってほしくないわ。もし、あなたが誰かの奥さんだったとしたら、夫の不倫相手をどう思う?殺してやりたいほど憎くない?そんな人間にあなた自らなろうとしているのよ」夕菜は泣きながら言った。「お母さん、だって、私理仁さんのことが好きなんだもん、どうすればいいの?初めて会った瞬間に、夢中になったの」「もう彼のことを考えるのをやめてしまいなさい。思い出さなければ、時間が経って忘れられるから。夕菜、私たちの言うことを聞いて。私たち辻家の人間は正々堂々と正しい道を歩む一族よ。あんな世間に顔向けできない

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第2143話

    夕菜は父親に叩かれた頬を手で覆い、信じられない様子で父親を見つめた。父親にぶたれた!夕菜は両親にとって唯一の子供だ。小さい頃から二人に大切に育てられてきた。彼女の才能を伸ばすために父親が彼女に厳しく当たることはあったが、今まで手をあげたことはなかった。それなのに、父親は娘に好きな男ができたぐらいで、平手打ちを喰らわせたのだ。夕菜は悲しくなり、涙を流した。この時、沙織がハッとして、娘が可哀想になり立ち上がると、娘が頬を覆う手を引いて夫に言った。「言葉で言い聞かせればいいでしょう。どうして夕菜に手をあげるの」「今私がお前を殴って、目を覚まさせることができないなら、今後は二度と会社に出入りするなよ。会社に大きなトラブルをもたらすような人間に、任せるわけにはいかない。たとえ私の唯一人の子供であってもだ!夕菜、もう一度言うぞ、彼のことは諦めなさい。社長はお前のことをまともに見たことすらないんだぞ。それなのにお前ときたら、恥も捨てて自ら下賤な不倫相手になろうとするとは。またそんなことをしようとするなら私はお前とは親子関係を切る。お前のような娘など生まなかったことにして生きていくからな!私の娘は品行方正で、きちんとした価値観を持ち、モラルのある人間でなければならない。お前のように真実の愛だとかいう旗を掲げながら、実は他人の家庭を壊そうとしているような、歪んだ考えを持つ人間など、私の娘ではない!うちのビジネスは幅広い。もし、娘が頼れない人間なら、辻一族の誰かに譲ろう。私には姪や甥はたくさんいるからな。必ず一人は辻グループを継ぐ力がある奴がいるさ。私も別に会社の後継者はお前でなければならないわけじゃない。お前のあの身代わり野郎だが、さっさと縁を切ってしまえ。もし、お前がまだあの男と一緒に、親しげな写真などを撮って社長夫人に送ろうとするなら、お前のカードは凍結させる。明日会社でクビにしてやる!」豊は冷ややかに言った。「私は言ったことは必ず実行するぞ!信じられないというなら、好きなようにやればいい。私がお前を会社から追い出さないか試してみろ。響君に会社を任せるかどうか、じっくり見ておくことだな!」そう言い終わると、豊は二階ではなく、外のほうへ歩いていった。「あなた、どこに行くの?」沙織は夫の様子にとても驚いていた。彼女は夫がまさ

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第2142話

    豊は本当に娘のせいで腸が煮えくり返りそうになっていた。豊は二十年以上も努力して、ようやく子供を授かった。そして彼女には辻グループの跡取りとなってもらいたいと思っていて、彼女も今までずっと自分を満足させてくれてきた。それなのに、彼女は理仁に出会ってから、彼の期待を裏切り始め、がっかりさせてくれる。「あなた、この子が何をしたっていうの?不倫して他人の家庭を壊そうとしているって?」沙織はこの件をずっと知らなかった。夕菜がある男を見つけて理仁の真似をさせていることも、沙織は知らない。夕菜はずっと母親に隠していた。どのみち夕菜の傍にいるあの男はただの代役であって、彼女が本当に求めているのは結城理仁だからだ。理仁の妻にあの写真を送りつけても、まったく何も反応が返ってこない。夕菜は送った写真の刺激が足りなかったのだと思い、次はもっと過激な内容の写真に加工し、唯花に送ろうと企んでいる。もし、唯花が理仁のことを信じ、何も反応をしてこなかったら、あの写真を「うっかり」芸能記者たちにでも流してしまおうと思っていた。その写真が一度でも記者たちの手に渡れば、絶対に星城の芸能ニュースで騒がれるはずだ。「お母さん、私は別に、ただ……お父さん、どうしてそれを知っているの?」父親は傍に置いている男はただの身代わりであり、唯花に写真を送ったことまで知っている。一体誰が、父親にそんなことを教えたのだろうか?父親は海外出張に行っていて、本来であれば年末にやっと帰ってくる予定だった。今はまだ十月にもなっていないのに、すでに帰ってきてしまった。つまり自分のこの件でわざわざ帰ってきたと?「もしかして、響がお父さんに教えたの?お父さん、彼はね、私とお父さんの親子関係を壊して、会社から私を追い出し、自分が有利な立場に立ちたいだけなの。絶対に彼に騙されちゃダメなんだからね。彼が言うことは全部信じちゃダメよ」夕菜も馬鹿ではないので、すぐに響を疑った。「響君のせいにするんじゃない。彼はお父さんの前でお前の悪口なんて一度も言ったことはないんだぞ。お前がやってくれた事がな、今どういう状況か説明してやろうか。前が奥様に送った写真をほかでもなく結城社長自ら写真に撮って私に送ってきたんだ。お前のことをしっかり管理するようにと訴えられたんだぞ」豊は娘を罵った。「お前

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第2141話

    「そこにつっ立って何をしているんだ?さっさとこっちに来なさい!」豊は厳しい声で一喝した。夕菜はこの状況は避けられないと悟り、笑顔を作って父親のほうへ歩きながら尋ねた。「お父さん、いつ帰ってきたの?なんで帰ってくるってひとこと教えてくれなかったのよ」豊はこの日帰ってきたのではなかった。彼は理仁からの訴えを受けて帰ってくると、家には戻らず、裏で娘の観察をしていた。そして、娘が確かに理仁に雰囲気が似ている男と一緒にいるのをその目で確認した。確実になってから、彼はこの日家に帰ってきたのだ。豊は黙っていた。夕菜は横で何か言いたげにしている母親のほうを見た。沙織は娘に目配せをし、夫のほうをちらりと見て彼がすごく怒っていると目で伝えた。夕菜は自分が理仁似の男にここまで送らせたのを思い出した。まさか両親に見られていたのだろうか?彼女が車から降りて家に入る時、両親が玄関先にいるのは見ていない。それなら、父親がどうして腹を立てているのか彼女には理解できない。「お父さん」夕菜が両親の前までやって来ると、沙織が横にずれて娘が座る場所を作った。「お父さん、どうしたの?なんだか怖い顔しちゃって。誰のせいでそんなに怒ってるのか教えてよ、私がそいつにぎゃふんと言わせてやるから」夕菜は父親の隣に座ると、持っていたカバンを置く前に、まずは父親の腕を組んで甘えた声を出した。「お父さん、出張長すぎよ、私もお母さんも寂しかったんだからね。出張疲れたでしょ?早く休んで、明日の朝は私が二人に朝ごはんを用意するから」豊は横目で娘を見て、厳しい口調で尋ねた。「今日は一日、一体どこへ行っていた?」「仕事が忙しかったの。お父さんが出張でいなかったから、毎日牛馬のように働いてすっごく疲れちゃったわ」「ゴホン、ゴホンッ」沙織はわざと咳をして娘にこの日は週末であることを気づかせようとした。だから、娘はこの日、仕事になど行っていないのだ。豊は妻のほうへ目を向けた。すると沙織は慌てて、さっき夫に淹れてきたお茶が入ったコップを手にとり、それを一口飲んで言った。「私ちょっと風邪を引いたのかもしれないわ、咳が出てきた」「お前が飲んだお茶は私のコップだぞ」沙織は「あら」とひとこともらし、すぐに気まずそうに笑った。「夫婦なんだから、たまにあなた

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第2140話

    白山家一家全員、どうにかして奏汰に玲を攻略してもらおうと思っている。玲は今年まだ二十八歳だ。本当に結婚しなければいけないような年齢だろうか?……辻邸の門の前。数台の車が門の前に停まり、クラクションを鳴らすのは控えていた。辻夫人に気づかれるとまずいからだ。車に乗っていた夕菜は自分のバッグを提げて、車を降りようとした。「夕菜」彼女に雇われて理仁の格好をし、彼女と親密そうにしている写真を撮ったあの男が、我慢できずに、後ろから夕菜の腰を抱きしめた。「夕菜、もう少しだけ俺と一緒にいてくれないか?」その男は夕菜と暫くの間一緒にいる。夕菜がただ誰かの代役として自分を雇っているのは彼ももちろんわかっていた。ここにある高級車、ボディーガード全てが夕菜がレンタルで彼のために用意したものだ。そして彼が着ているスーツは夕菜がプレゼントしたものだった。毎回、彼がスーツに革靴姿でビシッと決めた時、夕菜の彼を見つめる瞳には熱がこもっている。しかし、彼は夕菜が自分に別の男の姿を重ねていることがわかっていた。その男が一体誰なのか、彼は今もわかっていない。そして、金を積んで彼を雇い、夕菜に近づくよう指示を出してきた人物も、彼が一体誰に似ているのか教えてくれていない。響の目的は、夕菜の行動によりおじである豊を怒らせることだ。豊と夕菜の親子関係にヒビを入れること。そうすれば、響に辻グループを継ぐチャンスが生まれ、辻家の跡取りになれるからだ。響は理仁を怒らせる気はさらさらない。もし、この代役となっている男が、自分は結城理仁に似ていて、理仁がどのような人物かを知ってしまえば、今後彼が理仁になりすまして、悪い考えを持たないとは言い切れない。だから、響はそのことを秘密にしているのだ。夕菜ももちろん響と同じことを考えていた。「放しなさい、あんたね、度を超すんじゃないわよ!」夕菜は冷たく一喝した。「夕菜、俺、カッコよくないの?」彼は代役となり、夕菜と一緒に金持ちの日々を過ごしてきた。夕菜が連れて行ってくれる所は全て高級な所ばかりで、彼はこのような生活に完全にはまってしまったのだ。そして今、彼は夕菜との関係を本物にしたくなっている。もし、夕菜の本当の彼氏になれれば、彼女から全てお金を出してもらい、たくさんのメリットがもら

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第2139話

    碧は、はははと笑った。「俺はてっきり姉さんと何か実際に進展があったかと思いましたよ」すると茂は息子を叱った。「お前は考え方が歪んでいるんだよ。奏汰君をそのような人間だと思うんじゃない。彼は本当に紳士なんだ。私と母さんは人を見る目が肥えているんだからな」一目、奏汰を見た瞬間に彼のことを高く評価していた。彼を白山家の婿として迎え入れたいという考えがすぐに浮かんだのだ。それが思いもよらず、結城おばあさんの目に留まり、彼らが知らないもっと前から、娘は奏汰の結婚相手の候補として選ばれていた。娘が結城おばあさんの手によって、奏汰の妻として選ばれたことを知ってから、茂と弥和は奏汰のことを完全に婿として見るようになった。それに、結城おばあさんはカップル選びがかなり得意だと思った。玲は口数が少なく、厳しい性格をしている。だから、奏汰のようにおしゃべりなタイプだったら、夫婦になった時に家庭がしんと静かになってしまうことはない。奏汰にはいくらでも話題があるから、夫婦二人が話に困ることはないのだ。「父さん、俺も紳士なんだけど」碧はおもしろくなさそうだった。彼は自分のことをとても紳士だと思っている。女性に度を越したことを一度もやったことはない。「私はお前が紳士かどうかはよくわからんが、外の人はお前のことを女性にキョロキョロ目移りする奴だと思っているようだぞ。誰かがうちと親戚関係になりたいと思って話を持ち出してくる相手はいつだって姉さんのほうばかりだ。お前は姉さんと見た目はそっくりだし、各方面優秀ではあるが、誰もお前にお見合いの話を持ってきたことがないぞ。本当に娘のことを大切に思っている人が、外向きには白山家の次男坊という立場に目をつけないと思うか?お前はな、周りにたくさん女性を侍らせていて、毎日ずっと女性の尻ばかり追いかけているだろう。どんなタイプの女性だって傍にいるんだ。そんな男に誰が娘を嫁にやろうと考える?」茂は息子にガツンと言ってやった。弥和も息子に注意した。「もし、本当に好きな子ができたら、その子一筋になりなさいよ。その時はもう女の子たちと遊んで評判を下げてはダメだからね。そんなんじゃ、将来奥さんをもらうのは厳しくなるわよ。それから、芸能人はやめておきなさい。あなたが芸能人と親密そうにしていて、ゴシップでも出たら厄介よ。あな

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第835話

    「俊介、あんた新しい奥さんができたとたんにお母さんのこと忘れてしまったのかい。昔のあんたはこうじゃなかった、あの女狐に惑わされて母親すらも捨てる気か。ああ、私はなんて不幸なんだろうね、こんな息子を産んじまってさ、どうしてあんな女狐が嫁になんか来たんだろう。唯月さんや、お義母さんは後悔してるよ。私が間違ってた、やっぱりあなたのほうが良かった。食事の用意も家事もちゃんとするし、私にだって良くしてくれていたよ。夫を支えてくれて、あなたがいた頃は俊介の仕事もうまくいってたし、金運だって良かった。私たち一家はとても幸せに過ごしていたというのに。そんなあなたがいなくなってから、俊介の仕事はうまくい

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第760話

    「そこの佐々木さん、何を勘違いしてるわけ?これは私が義父母に用意したプレゼントなんですけど。姉の物じゃありませんよ」唯花は淡々と口を挟んだ。「仮に本当にそうだったとしても、あなたのお金を使ったわけじゃありませんから、余計なお世話ですよ」姉に陽の養育費をちゃんと記録させ、明細を提出するよう強要してくるとは何事だ。佐々木俊介という男は本当に正真正銘のクズだな!こんなクズ男と、佐々木母は一体どの口で唯月に復縁するよう言ってきているのだ?図々しいにもほどがある。世の中には彼女の息子しか男という生き物がいないとでも思っているのか?本当に笑わせてくれる!「お前の?義父母にこんなに多

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第762話

    「母さんは悪気があって言ってるんじゃないって。年配者にそんなカリカリしなくたっていいだろ?莉奈、結納金のことなんだけど、本音を言えば、確かに成瀬家からの要求は多すぎるよ。もし、そっちに一千万以上の結納金をあげて、そっちも全部俺らのために使ってくれるなら、喜んで結納金を渡すんだけどさ。俺が出す半分でもそっちが出してくれれば、嫌な気はしないんだけど。でも、君の両親は、ただ新しいシーツセットと、電動バイクしかくれないだろ、そんなの大した金額じゃないじゃないか。二十万もしないもんだ。君の両親が来たあの日、俺、実はこそっと聞こえちゃったんだ。結納金の一千万は二人のお兄さんに半分ずつ分けて、お兄さ

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第743話

    佐々木母を脅かして帰らせると、唯花は姉に言った。「お姉ちゃん、今後あの人が来ても家に入れさせないで。玄関に椅子でも置いて、お茶とおつまみも準備して、あなたがそこに座ってお菓子を楽しんでよ。あの人の愚痴を赤の他人として聞いてやればいいのよ」理仁も言っていたが、佐々木母が陽をまた誘拐しに来たのでなければ、あまり構う必要はない。ただ彼女の愚痴を聞いて、あのクズ男と最低女の続きを聞くだけだ。「私は一切関わりたくないけど」唯月の行動から、彼女が本気で元姑を相手にしたくないのがわかる。いつもいつも彼女のところに訴えに来て、佐々木母は一体何を考えてるのか理解できなかった。普通であれば

続きを読む
無料で面白い小説を探して読んでみましょう
GoodNovel アプリで人気小説に無料で!お好きな本をダウンロードして、いつでもどこでも読みましょう!
アプリで無料で本を読む
コードをスキャンしてアプリで読む
DMCA.com Protection Status